\title{科学普及NPO法人の運営と実際} \author{柴田 晋平 \\ (NPO法人小さな天文学者の会・山形大学理学部)} \section{はじめに} 「科学普及NPO法人の運営と実際」というテーマでお話しますが、 広くたくさんのNPOについて調査したわけではないので、私自身が、 運営に関わったNPO法人小さな天文学者の会での経験で知った ことを中心にお話ししたいと思います。 私自身は山形大学理学部で宇宙物理学の研究と教育に携わって いますが、この10年あまり市民のみなさんと一緒にNPO法人という形式を とって様々な活動をしてきました。 このなかで科学者とは違った立場で活動するようになりました。 いわゆる科学のアウトリーチとは違ったイメージです。 それについてはこれからお話しますが、とにかく、科学をなんとしても 推進するというよりは一市民として科学を音楽・文学・絵画などの芸術と 同じように扱う 考えがこの文章のベースになっています。 \section{NPO法人} 題名の 「科学普及NPO法人」という言葉の中で、まず、 NPOというのは Non-Profit Organization の頭文字で、 社会貢献活動などを行う、営利を目的としない(つまり、非営利の)団体の総称です。 NPOのうち特に、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づき 民法上の法人格を取得した団体がNPO法人ということになります。 私がもっとも強調したいことは、NPOにとって最も大事なことは NPOの活動目的です。特にこれをNPOのミッション(使命)と呼びます。 これがしっかりしていないとNPOの運営はうまくいきません。 このミッションに科学というキーワードが入ってくるのが 科学NPOということになります。講義の題名には 科学普及NPOとなっていますが、私自身は「普及」ということば ちょっと違うとおもっています。なので、普及という部分は 省略して考えて構いません。単に、科学NPO法人です。 最初に、NPO法人について集中的に考えましょう。 NPOという考えが出てきた背景は以下のようなものです: ある社会的なサービスを提供するには、政府・自治体などが 行おうとすれば広く多くの人の了解が必要です。 つまり、議会で可決して実行に移すのはかなり大変な作業です。 また、企業は利益が上がる見込みのない サービスを提供することは考えにくいものです。 NPOとは、こうした政府・自治体や企業では 扱いにくいニーズに対応する活動を自発的に行う組織です。 (総務庁ホームページの説明) 上の説明では政府自治体のサービスが悪いのはいろんな事の 調整が大変で、、、、といった感じに見えますが、 いわゆるお役所仕事といって、本当に親身になったサービスが 政府や自治体から受けられないという経験があるのは事実です。 本当にそのサービスの必要性を感じ取った人が担当者しなければ 上質のサービスは提供されないのではないでしょうか。 マニュアル通りにやってもなかなか必要とされる サービスは提供されることはありません。 自分たちの生活を豊かにするために必要なことは自分たちで研究して自分たちの 手で実現しようとするのが NPOの活動です。 これは一種の直接民主制です。 たとえば、私たちの場合ですと、「山形市には天文台も科学館も プラネタリウムもない(本当です)。だったら、自分たちの手で つくろう。」という風になります。 自治体に天文台を作ってくれるように請願運動するのでなくて、 自分たちの手で作っちゃう。必要な経費などの援助は自治体で 援助してくれるのは大歓迎でそうして欲しいですが、まず、 自分たちで作っちゃう。 そうではなくて、請願運動をして天文台を要求したとして、 万一、私たちの意見が聞き入れられて県立や市立の天文台が できたとしましょう。そのとき、果たしてその施設が私たちの希望するサービスを 提供してくれるでしょうか?ここにも疑問がわきます。 できたころまではいいかもしれないが、そのうち職員の意識が 下がってサービスが悪くならないかしら。職員の勤務や運営維持費(夜の 電気代、夜間の警備員の費用)などいろいろな問題が発生し夜間の観望会は 実施できなくなる心配はないでしょうか。 NPOで運営すれば市民が欲しいサービスが提供できる 天文台ができるのでないかというような考えがわいて来ます。 このように、地自体でなくてNPO が運営する天文台というのも魅力があります。資金の一部は 自治体で(税金で)賄うことは歓迎されますが、運営はNPOの 方が良さそうです。 (私たちの「やまがた天文台」は山形大学の理学部の援助の下で、運営は NPOで実際やっています。彗星が突如現れても、それを朝方まで観測することが いつもできます。) 健康福祉、環境保全、、、あらゆる分野について社会を 運営する仕組みの中にNPOが有効でないか?という考えが わいてきます。これまでの人類の歴史の中で培ってきた 社会を運営する仕組みのなかに、また新しい仕組みとしてNPOを 組み込もうというわけです。 NPOに期待されることの中に政策提言能力というのがあります。 日頃のNPO活動の中で培ったノウハウを生かしてこれからどうしたら よいか、問題解決の方法を、政府・自治体、企業などに 提言することが役割として期待できるのです。 すごく、単純な例として わんちゃん大好きNPOを考えましょう。 そのミッションは定かではありませんがとにかくワンちゃんが 大好きな人々が集まったNPOがあるとします。 ここで、ドッグフードを作る企業が商品開発を自社でやるのでなく て、このワンちゃん大好きNPOに依頼することができます。 なにせワンちゃんがこの世でもっとも大切と考えている 人たちの集団ですから、ワンちゃんが大好きで売れる商品、 そして、なにより安全な商品の提案をしてくれそうです。 企業はもちろん調査費、研究費を出します。 試作は企業がして商品のテストもNPOがしてくれます。 企業からすれば商品のPRも楽です。一方、利用者が欲しい 商品が提供されます。相互にこれは十分なメリットがあるでしょう。 この話は単純化されすぎていますが、政府・自治体の政策決定 において官僚が勉強するだけでなく基礎調査の段階から 関連したNPOが入ることで、より現実的な計画が立案できる ことが期待されます。 次に、Non-Profit (非営利)という言葉意味を明確にして おきましょう。 利益を得て配当することを目的とする組織である企業に対し、 NPOは、 利益を配当しない(Non-Profit)で 社会的な使命を達成することを目的にした組織です。 NPOは活動で得た利益を配当しませんが、 得た利益を次の活動資金にして目的の達成レベルをあげるのは 問題ありません。なので、目的のために収益事業をやることは 普通に見られることです。 簡単な例をあげてみましょう。 例えば何かの事業で収益が出たとして、 そのお金を使って会員で宴会をしちゃった、というのはダメです。 今回、望遠鏡が不足したので収益で買うというのは問題ありません。 また、非営利というと無償ボランティアをイメージする方も おいでと思いますが、そうではありません。NPOの活動のなかで 労働に対する正当な賃金を受け取ることはまったく問題無く、 普通のことです。 したがって、NPOのサービスが有償になることも普通にみられることです。 むしろ、お金を回して、ミッションの実現を促進するのは歓迎されます。 最後に法人格についてです。 NPOの後に法人というのがつくと、それは、 特定非営利活動促進法(NPO法)に基づき法人格を取得した組織 であることを意味します。 法律で定められた手続きを経て、NPO法人になり、法務局に 登記手続きをとります。 ここで、特定という言葉が付いているのは法人取得のためには 法人の目的が法律で特定されているということです。 法律で決められた目的は以下のとおりです。 一 保健、医療又は福祉の増進を図る活動 二 社会教育の推進を図る活動 三 まちづくりの推進を図る活動 四 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 五 環境の保全を図る活動 六 災害救助活動 七 地域安全活動 八 人権の擁護又は平和の推進を図る活動 九 国際協力の活動 十 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 十一 子どもの健全育成を図る活動 ? 十三 科学技術の振興を図る活動 ? 十四 経済活動の活性化を図る活動 ? 十五 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動 十六 消費者の保護を図る活動 ? 十七 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡 必ずしもすべてのNPO団体が法人格をもっているわけではありません。 法人になる必要は必ずしもありません。 ただし、団体が法人となれば、法的・社会的な位置づけが 明確になり、代表者個人でなく団体として契約ができ、 委託の主体となることもできて、 対外的な信用はつくりやすくなります。 その反面、規則に従った届け出や報告の 手間と法人としての税務が生じます。 これについては後で議論します。 \section{ミッションについて} 科学(普及)NPO法人といったときの科学(普及)という部分について 考えていきましょう。 先に述べたようにNPOにとってミッションが何かを明確にして 活動することは非常に大事です。 しばしば引用される例をあげます。 井戸を掘る NPO法人があるとします。東南アジアなどで きれいな水が得られない村に井戸を提供する活動があると 聞いています。さて、井戸が完成し村がだいぶ良くなった 段階で、村人から今度は学校が欲しいという意見が出たとします。 さて、この井戸堀NPOがはたして学校づくりの事業を行うか どうかは難しい問題です。この問題にかかわれば相当の 労力が必要ですし新しいノウハウが必要です。経費も必要です。 新しいミッションを加えることによって負荷がかかりすぎて 組織が崩壊する危険もあります。 学校づくりを専門とするNPOにバトンタッチするのがベストな 選択と考えられます。 NPOのミッションは常に確認しあうことが必要ですし、 いつもわかるように提示する必要があります。 ミッションによって集まってくる人々のインセンティブ (何をしてハッピーと感じるか)が異なっています。 集まってくるひとの能力もミッションによって変わってきます。 メンバーの能力が多彩で、そのメンバーが協力したり、ひとりひとり いろんなモティベーションが あることは組織を活発にしてくれると思われ、歓迎されることかもしれませんが、 一方、ミッションがわからなくなることも非常に危険です。 常に、自分たちのミッションが何なのかをはっきりさせる こは重要です。そして、ミッションが何なのかを 常に掲示すべきです。たとえば、会報やホームページなど つねにメンバーの見えるところにミッションを提示しておきましょう。 メンバーがミッションをつねに覚えていて心に納得して留めているのが いいです。 この意味で収益事業を行うときには注意が必要です。 ミッションを忘れてお金儲けに走ったりしてしまいそうだからです。 お祭りなどもいいですがやはり同様の注意が必要です。 事業を多角的にしたいときのひとつの良い方法は、他のNPOとの共同です。 サイエンスの講演会を、耳の不自由なかたのために要約筆記つきで実施した ことがありますが、これは要約筆記のNPOとの共同事業でした。 このミッションをどこに定め、ミッションを拡大するか、特定の範囲にとどめるか といった判断は結構難しい問題です。 では、NPO法人小さな天文学者の会のミッションはどうなって いるのでしょうか。 定款を見るとこうです。 (目的) 第3条 本会は、宇宙を中心として自然を見て 感じて楽しみ、すべての市民が その楽しみをわかち合いさらに 自然科学の心と目をもつための啓蒙・普及活動 を行ない、 そのために必要な自然科学教材開発および学校教育・社会教育の 発展のための調査研究提言を行なうことを目的とする。 定款ですから文章が堅苦しいですし、 法律でしていされた目的に合うように外向きの文章になって います。啓蒙などという適切でない言葉も使われています。 もうひとつこの目的には問題があって、それは 発足当初は「科学教育という形での社会貢献」を意識していて 「もっと別のところ」に大切なものがあるということを 見抜けていなかったということがあります。 当初の目的と現在の目的は発足以来5年が経過してすこし 変化してきています。 現在、掲げているスローガンは、 「宇宙を見て、感じて、楽しもう」 です。このためならななにをしてもいいことになっています(笑)。 科学の目で宇宙を眺めることを通して、科学的な考え方が 日常を楽く豊かにしてくれると、当初は単純に仮定していました。 しかし、活動しているうちに宇宙や星空という素材が 生活を豊かにしてくれるのは、 科学だけでなく他にもいっぱい要素があって、 それらを総合的に扱うようになりました。 サイエンスといわゆる文化的なこと(芸術、アート) を総合してバランスよく取り入れて、「宇宙を見て、感じて、楽しもう」 という比較的単純なスローガンでの活動方針が確立しています。 宇宙を見て、感じて、楽しもうという活動の中で、 自然に科学的な見方も日常生活に浸透し、 結局は豊かな精神生活が営める環境を提供することができています。 さらに加わったのは「ハッピー二乗の法則」の考えです。 これは、上にあげた宇宙を見て、感じて、楽しむという 活動で私たちは幸せになるのですが、それはハッピー一乗です。 こんどは、私たちは、ハッピーを感じたことをイベントなどで 参加者に提供するのですが、当然、参加者はハッピーを感じる ことができます。そして大喜びです。そのハッピーな姿を 見ることでもう一度、提供した私たちはハッピーを感じます。 これがハッピーの二乗です。これがあるから、また、 そのハッピー提供の仕事をやろうと思うし、NPOの活動が 活発になります。 (これは自己顕示欲を満足させるというふうに取らないでください。 実際の活動を見ていて感じるのは、このハッピー二乗は、言い替えると、 共感の輪が広がっているということだとおもいます。) この二つの方針をしっかり維持し、新しい、手法でそれを 発展させたり、他の地域へ発信することがだいじと考えて います。 \section{科学について} 次に科学をミッションに加えたNPO活動を広く考えてみたいと 思います。 まず、第一にはっきりしておきたいのは科学(サイエンス: 自然法則の解明)は非常に面白いということです。 これの虜になって、寝食忘れ、恋もしないで、これに命を かけていいという人もいます。 サイエンスに一生捧げて悔いがないという人もいます。 最近まで私もそうでした。 ある種の本能のようにサイエンスに対する感受性の強い人々 がいて、科学者の多くはそういう人でしょう。 プロの科学者でなくても、この感受性を強く持った人は 沢山います。そしてその線に沿ってそれぞれの追求をしていると思います。 サイエンスの強みはその普遍性にあります。 サイエンスによって得られた法則は実験によって検証されて、 数学的道具立てによって記述がしっかりしています。 なので、進歩がしっかりわかります。 アートがひとりひとりの感受性に依存して善し悪しがかならず しも決まりにくいのと対照的です。 正誤の議論を戦わせてもむなしさを感じることはありません。 自然法則の解明をしている人にとっては、 自らが解明したことが引き継がれてゆくということ、 つまり、普遍性を帯びるところがまた大きな魅力です。 さて、私どものように天文学をやっている者は時々、 「天文学なんて役に立たない学問してますけど、、、」 なんて言い方をしてしまうことがあります。 しかし、この表現は正しくありません。 サイエンスの研究が役に立つということはあるのですが、 「役に立つ」の反対語は「役に立たない」では、ありません。 何だかわかりますか? 役に立つの反対は、害があるです。 サイエンスの価値はそれがどれほど真実に近いかです。 真実に迫るほどサイエンスとしては価値があります。 逆は迷信やうそです。たくさんの迷信から脱出してきたのが科学の歴史とも 言えます。 科学の軸と全く別の座標軸として「役に立つ・害になる軸」 があります。科学としての真実性と 人間にとって役に立つか害を及ぼすかはまったく別の問題です。 よく知られた例は、核物理でしょう。原子核物理では陽子や 中性子などの要素とその集合体としての原子の基本的な性質を明らかにしてきました。 しかし、これは原子爆弾を作るということを可能にしました。 DDTの発見はノーベル賞をもたらし、マラリヤを激減させる ことに貢献しました。しかし、その後、発がん性がわかり 現在は使用されません。これがまたマラリヤの再燃につながり 問題になっています。このように同じ科学上の発見が役に立ったり 害になったりと使い方によって、また、歴史の流れの中で、どちらにもなります。 科学のみならず技術も同じことがあります。同じ技術、たとえばロボット技術 は役に立つ使い方も兵器のような悪い使い方も可能です。 NPO活動の性質もこの座標軸上の位置で考えることができます。 サイエンス軸にどちらかといえば沿った活動があります。 ここではサイエンスの面白さを伝える活動、教材開発などが行われています。 科学者の次世代養成を目指すことを目的に掲げた活動もあります。 一方、役に立つ軸を重視した活動もあります。 環境を守る活動、食品安全、科学と法律といったことをテーマに した活動が該当します。 「社会の側が科学技術の側と協働する上で求められる 特質(科学技術リテラシー)を明らかにし、 そのための対応策を提言すること。」をミッションに掲げた NPOがありますがこれもよい例です。 ふたつの軸は独立したふたつの要素があることを示しています。そして、 実際の活動は二つの成分が混じっています。 科学普及NPOといっているのは主にサイエンス軸に沿った活動 団体を指すと考えられます。 %図1 sci-npo-fig1.eps or sci-npo-fig1.jpg NPO活動にはサイエンス軸と役に立つ軸の二つの独立した軸があり この二次元空間にNPOのミッションの位置づけることができる。} 講義では、サイエンス関連NPO法人の例をあげて、どちらの軸に 沿った活動かを試しに分けてみましたが、ここでは省略します。 サイエンスと対照されるものにアートがあります。 これは人間の心あるいは感情、感覚を表現することを 中心とした活動です。そして、サイエンスとともに 人間の生きがいを与えてくれる重要な要素です。 なので、さらにアートの軸を考えて3次元空間で考えてみましょう。 サイエンスの成果の価値は真実にどれくらい近いかで 評価可能ですから、軸の目盛ははっきりしています。 アート軸はサイエンス軸と違って、軸が直線的に延びているわけではありませんが、 いちおう座標軸として考えます。 (アートは感情の表現ですので人によって評価が異なり、良い悪いの 判定が難しいものです。人それぞれ個性があるところがむしろ重要で、 評価が異なるのはアートとしては本質的に喜ばしいことです。) 「サイエンスからアートに向かった何か」を 小さな天文学者の会の活動の中から私は感じています。 サイエンスとアートが有機的に結びついて心の豊かさを与えたり、 生きる勇気を与えたりすることを体験したからだとおもいます。 特に、宇宙物理学や生物学は、人間をすっぽり覆っている自然を 理解する上で影響力の大きい内容を持っています。 論理を越えた感情や感覚の動きと 自然を論理的にどう理解するかということと のふたつをどうバランスさせるかは 人間が生きていく上で非常に重要だと思います。その意味でも、 サイエンス軸だけでなくアート軸を考えておくことは重要です。 %図2 sci-npo-fig2.eps or sci-npo-fig2.jpg NPO活動には第三の軸としてアートの軸を考えることができます。 私たちはアートとサイエンスのバランスを考えた活動をしています。 前の図と合わせると三つの軸がありそうです。} 科学普及だけでなくアート軸も強く意識した考えかたがNPOの活動を支える 力になっています。 私たちのNPO活動はサイエンス軸とアート軸の両方に 成分があるといえます。 科学が文化として適切な位置を見つけるにはこの二つの成分が 必要で、しかも、サイエンスとアートと日常の心の動きと結び つける様々な活動方法、技術などがあると思われます。 アートとサイエンスがバランスしたこのよう活動にももう一つの要素として 役に立つ(害がある)軸がありそうです。 つまり、アートとサイエンスがうまくバランスしていても、それが 役に立つのか害を及ぼすかは使い方次第です。 たとえば、サイエンス+アートの融合体を利用して反社会的なカルト集団を 結成するときの手段に使うこともできますから。 講義では、 サイエンス軸とアート軸の両方に成分を持つと思われるNPOを ホームページの紹介記事から拾ってみましたがここでは省略します。 このようにさまざまな科学に関連したNPO活動が行われてい ますが、ここで宇宙に関係したNPO法人にどのようなものが あるか見てみましょう。 NPO法人を管理している内閣府のNPOのデータベースから まず、登記されたNPO法人の目的と 登録数を見てみると、科学に関連したNPO法人数は およそ数千と思われます。 特に、宇宙、天文、星空、星+宇宙 を会の名称に含む法人は 24法人ありました。 \section{法人格について} 自分たちの組織が法人格を持つべきかどうかは慎重に判断すべき です。ここで、法人化のメリットとデメリットを比較してみます。 民法上の法人になりますので、財産の所有ができます。 これは一つのメリットになり得ます。 町内会は法人ではふつうありません。すると、 町内会の持つ公民館が町内会長(個人)の名義になっていたりします。 新しい町内会長に交代するとき名義変更が必要になりますし、 前会長が手放したくないといったら問題が発生します。 また、活動グループで電話を持とうとしたとき、法人でないなら、 誰かの個人の所有とするしかありません。 寄付金、助成金などの受け皿になることもメリットです。 私たちもNPO法人としてさまざまな補助金を受けています。 また、それが持続すれば「認定NPO法人」になれ、 寄付金にたいして免税措置を受けられます。 法人格を得ることで団体の信用度が増します。 そして契約の主体となることができます。 受託研究などを受けるときにメリットがあります。 NPO法人になると、年次計画を立て、年次報告書を書き、 決算書を作らなければなりません。 理事は変わるたびに登記しなければなりません。 これらはデメリットとなります。特に、小さな活動グループ にとってこれは致命的になり得ます。 われわれも事務員をひとり雇いたいほどの仕事量をボランティアでこなして います。 また、納税義務も発生します。 結論としては、 法人になるかどうかはメリット、デメリットを比較しながら よく考えたほうが良いということになります。 私の所属するNPO法人小さな天文学者の会は会員数が130人位で 役員も10から20人、収益事業はしていませんし、 なにせ宇宙大好きな仲間という感じの団体ですから、 法人になるかならないままでいるか迷う微妙なサイズです。 法人になれば、貸借対照表や収支計算書のようなものを 出さなければなりません。年次計画、年次報告書も書かねば なりません。これは監督官庁に提出します。 理事も変わるたびに法務局に行って 登記しなくてはなりません。税金もかかります。 ただし、私たちのような収益事業をしない団体には 免除措置があって、県民税と市民税の均等割り、合計7万円が 免除されています。(それとても書類提出が必要です。) 事務員をひとり雇いたいくらいの事務量です。 でもそんなお金はありませんから無償ボランティアに頼って います。 では、法人にならない方がよいか?というとそうでもありません。 たとえば、山形大学(国立大学法人)と私たちのNPO法人は やまがた天文台を共同で運営するという趣旨の覚書を交わして いますが、これは私たちが市民の任意団体でなくてちゃんとした 法人だったことが幸いしました。大学から見たときに信用度が たしかに高くなっています。 法人の名前で科学技術振興機構などから助成金を獲得しています。 また、会計や年次計画をはっきりして、理事会で運営を話しあう ことが習慣化したために組織としてしっかりしたといえます。 (なれっこになったり、ミッションが崩れたり、しにくくなった といえます。) 私としては任意団体でなくNPO法人になってよかったなと思って います。 \section{財政} 科学NPOの財政は厳しいものがあります。 活動資金を得ることは結構大変です。 NPOの収入は健全な順に、 1. 会費、 2.助成金 3.収益事業 があげられます。 会費収入は安定しており使い方もミッションに最大限フィット させることができます。 助成金は時として大きな額になりますが、 使い方に制限がつきます。また、 ひも付きであったりするためミッションに沿わないことを する羽目に陥ることもあります。 報告などの事務量が膨大になることがあります。 (事務員を雇うだけの補助金を獲得できれば、 新たな雇用が発生し、それはそれでいいことかもしれませんが。) 助成金の使い方への制限や事務量のために、ときどき「こんなんだったら もらわなければよかった」とすら思えることもあります。 収益事業は原理的にはミッションと関係がなくてもかまいません。 宇宙のNPOが、輸入食品を販売して収益を得てもかまいません。 しかし、ある金額を得るためにその10倍程度のお金を まわさなければなりません。その意味で効率はよくありません。 また、ミッションに関連していたとしても収益事業には 真剣に検討してからはじめるべきです。 それは、メンバーのインセンティブがそれに影響されるからです。 いつの間にかお金儲けに走ってしまい、 ミッションを忘れてしまう会員が出ないように気をつけましょう。